なかやまのATT日記-140字では納まりきらない呟き

A=あるがままに T=とりとめもなく T=たいくつしのぎ・・・な日記。

お天気キャスターの息遣い

f:id:nakayama-att:20150712162638j:plain

ヘッドセットのマイクは、声以外に息を吸う音も敏感に拾います。言葉と交互に息を吸い込む音が聞こえて来るのが気になること自体、神経質すぎると言われれば確かにそうとも言えますが・・・。あるニュース番組で、お天気キャスターの息継ぎはわりと耳障りです。以前は屋外からのレポートだったので、ピンマイクだと風の音なども拾ってしまうからヘッドセットにしてるのかなぁ~?と考えていましたが、最近ではスタジオでやっていてもやっぱりヘッドセットのままです。一言伝える度に、律義に息を吸っている音までが「へっ!」「へっ!」と届きます。

吸気という言葉に惑わされているのかどうかは分かりませんが、息は意識的・能動的に吸うものだと、一般的に人は思ってしまうようです。特に歌や話術等を教えたり教えられたりする中で、息はしっかりと吸わなければならないという余計な情報を植え付けられてしまっている人が圧倒的に多いと感じます。

もちろん吸っても息は入って来ます。しかしことさらに意識して吸わなくてもやっぱり息は入って来ます。人間が呼吸をする時、単純に大別すると二通りのパターンに分けることが出来ます。一つは緊張と共に息を取り込み弛緩しながら息を出す、もう一つはその全く逆で、弛緩することで息を迎え入れ一定の緊張と共に息を吐き出すというものです。普段私たちが安静時や就寝時にしている呼吸は前者ですが、では後者はどのような時に用いられているのでしょう?

例えば物を投げる動作、野球の投手が最も効率よく威力のある球を投げるには、指先からボールが離れる瞬間と運動エネルギーの頂点が一致していることが重要だと思われます。その瞬間にこそある一定の良い意味での緊張の高まりが必要な訳です。その為には、そのポイントへ到達する前段階での弛緩状態の確保が絶対的に重要です。

これはそのまま呼吸に置き換えられます。物を投げる瞬間、バットやラケットで球を打ち返す瞬間、サッカーでボールを蹴る瞬間、水泳のスタートの一瞬、相撲の立ち会い等々・・・挙げていけばきりがないですが、これらの動作と同時に起こっているのは呼気でしょうか?吸気でしょうか?試しに一度これらの動作と同時に息を吸おうとしてみて下さい。かなり苦しいというか、無理が生じるのをすぐに体感出来ると思います。

何かの理由で意識して息を止めない限り、その動きに即した呼吸が必ず自然と起こっているのです。中には気合が入りすぎて投球と同時に声を発してしまうピッチャーも時々居るくらい、その投げる一瞬には呼気が起こっています。つまりその肝心なエネルギーの塊を放出する前段階には、必然的な緩みがやって来ていることが理想的です。ピッチングやバッティングでは、インパクトの前段階で自分の軸足に体重が乗る瞬間がとても重要で、それを間と表現しています。この間を作っている時、無意識に心地好い吸気がやって来ている筈です。弛緩することで息を迎え入れ一定の緊張と共に息を吐き出すパターンです。

人が自分の中からエネルギーを発するような作業、スポーツでのパフォーマンスや芸術的な表現活動に於いて最も自然な姿とは、そのエネルギーの頂点をより純度の高い洗練されたものにする為に、各々の前段階で一定の緩みが確保されており、それがそのまま呼吸と一致していることだと言えます。

歌唱や話術といった、人に何かを伝える為に声を使う場合(独り言以外の声全般)にはなおさら呼吸が重要です。何しろ声は呼気そのものですから、声が出ている時=呼気時にエネルギーは正しく放出されている必要があります。つまり声が出ていない時=吸気時は、弛緩しているべき時なのです。意識して息を吸い込む作業がそこに入り込むということは、知らず知らずのうちにずっと緊張しっぱなしということになってしまっているのです。そのような本来は無くても良い、否無い方が良い吸気時の緊張は、多かれ少なかれその直後の呼気=声に何らかの悪影響をもたらしている筈です。単純に考えて疲労度が高まりますし、場合によっては聴き手にもそれが伝播してしまうこともあるでしょう。

大切なのは、緩むことで息を取り入れる能力を他ならぬ自身も有しているという事実を知ること。そしてもしもそれがすぐに実行出来ないとしても、極めて簡単な意識付けやちょっとした練習で、誰でも想い出すことが出来るということです。

これでやっと本題に戻れます。お天気キャスターの鼻息が耳に付くということは、緊張と緊張の連続の声に、聴き手のこちらも無意識に緊張を強いられることと、最も効率の良いシステムから導き出されたとは言えない声が、公共の電波に乗って全国に届いてしまっているということに、どこか引っ掛かるということかも知れません。あぁ~、やっと長い話が終わった、と思ったけれど、まだこの話には続きがあります。吸気で弛緩、呼気で緊張・・・と一言で言っても、今度はその中身が大事です。とくに呼気時に於ける緊張の質、の問題です。「声を出す時に緊張するなんてとんでもない!!」という非難の声が聞こえてきそうです(誰かがこれを読んでいればの話ですが・・・)。「声を出す時には身体の力を全部抜いてリラックス!リラックス!」ですからね。それはまた別の機会に記すことにします。